PMOアワード2025「最優秀賞」

日本たばこ産業株式会社

グローバルPMフレームワーク導入による戦略的PMO体制の構築と大規模プロジェクトの成功

PMOアワード2025授賞式

写真左)代表取締役副社長 嶋吉耕史 様 /(写真右)一般社団法人日本PMO協会 会長 理事

応募内容の概要

日本たばこ産業株式会社(以下、同社)は、国内たばこ事業の基幹系システムを刷新するにあたり、グローバルITで活用されているプロジェクトマネジメントのフレームワークを国内大規模プロジェクトで初めて導入した。

SAP ECC6.0のサポート終了と、国内・海外たばこ事業の構造改革を実現するため、国内基幹系システムを廃止し、グローバル基幹系システム(グローバルSAP)へ移行する大規模プロジェクトを企画した。

従来の国内ITプロジェクトでは、明確なフレームワークがない中で、プロジェクトマネジャーの経験、またはITベンダー依存の体制で進められることが多く、プロジェクトマネジメントの標準化が課題となっていた。

今回のプロジェクトでは、社内で経験のない規模のグローバルITプロジェクトを推進するにあたり、従来の手法を刷新し、グローバル標準のプロジェクトマネジメントフレームワークを導入してプロジェクトを実行した。

その結果、数百億円規模、約2,000名が参画するSAPリプレースプロジェクトを、一切の遅延もコスト超過もなく成功させた。あわせて、従来課題とされていた「業務部門の巻き込みの弱さ」「関係社員の意識改革」「ITベンダー依存体質」「事務局PMOの高負荷」などを解決することができた。

 

PMOの活動概要

導入した「グローバルITプロジェクトマネジメントフレームワーク」は、同社のグループ会社であるJapan Tobacco International(JTI)で活用されている独自のフレームワークである。

JTIはJTグループの海外たばこ事業を担い、130以上の国と地域でビジネスを展開しており、あらゆるプロジェクトの知見がこのフレームワークに凝縮されている。

同社は、このグローバルITフレームワークを国内に導入し、国内の大規模プロジェクトにおいて初めて活用した。

これにより、今までプロジェクトマネジャーごとに異なっていたマネジメント手法や、プロジェクト終了後に知識が組織に残らないという課題を克服し、プロジェクトマネジメントの標準化を実現した。

プロジェクトは、以下の3つの体制で構成された。

  • Business Process Integration:ビジネスデザインを担う領域
  • Business Deployment:運用への実装を担う領域
  • IT Project Delivery:システム開発を担う領域

今回のプロジェクトでは、ビジネスサイド、開発サイド、運用サイドが一致団結して進めることが不可欠であり、重要なマネジメントテーマごとにPMOを配置。

PMOは、全社へのプロジェクト広報や情報発信機関としても機能し、全社経営メッセージを浸透させ、全社一体のプロジェクト推進体制を形成した。

PMO組織は約10名のリードと実行メンバーで構成され、各テーマのリードを中心に、横断的な調整とガバナンスを担った。

 

PMOアワード2025

(画像提供)日本たばこ産業株式会社

PMO活動の特徴

  1. 業務部門の巻き込みと定着の推進
    業務プロセス検討は業務エキスパートに、組織的なコミットメントと定着は各組織長にそれぞれアプローチし、プロジェクト体制上この二つを明確に分離した。
  2. 調整構造の合理化
    数多くの業務部門(100部署以上)との調整を効率化するため、複数部署をまとめた代表者を選定し、PMOが代表者と直接コミュニケーションを取る方式を採用。1対多の関係を整理し、迅速な合意形成を実現した。
  3. PMO機能の細分化とリソース最適化
    一箇所集中型の事務局体制を廃止し、プロジェクト標準推進チーム、業務部門落とし込みチーム、チェンジマネジメントチーム、進捗管理チーム、予算管理チームを設け、それぞれにリードと十分なメンバーを配置。テーマごとに専任PMOを設置し、責任範囲を明確化した。
  4. プロジェクトブランディングと社内浸透施策
    プロジェクトポリシー(標準化推進の強調)、専用資料テンプレート、プロジェクトカラー、マスコットキャラクター、プロジェクトグッズ、社内SNS活用、ニュースレター配信、社内イベント開催、異文化理解トレーニングなどを展開。社員の理解促進と意識改革を図った。

これらの取り組みにより、PMOは調整・統制のみならず、情報発信や組織的意識変革を推進する中心的役割を果たした。

 

PMOアワード2025授賞式

Espoirプロジェクトの関係者の皆様

PMO活動の価値・成果

PMO活動により、規模が大きく難易度の高いSAPリプレースプロジェクトを、遅延やコスト超過なく成功裏に完遂した。

また、ITプロジェクトにおいてプロジェクトマネジメントのフレームワークの価値が社内で再認識され、PMO機能を継続的に活用するための基盤が構築された。

プロジェクト成功の結果、国内たばこ事業のIT内で初めてPMOチームが正式に組成され、またグローバルPMO組織との連携も開始され、今後の各種プロジェクトにおいてPMOが有効に配置・活用される体制が整備された。

PMOによる組織間連携の重要性が社内で認識され、プロジェクト推進におけるPMOの価値が明確に示された点は、同社にとって大きな成果となった。

 

審査委員の評価ポイント(ベストプラクティス)

戦略的かつ実践的なグローバルPMO体制構築の価値

同社は、自社の大規模プロジェクトに最適なPMO体制を設計し、戦略的に構築した点が高く評価された。

全社型PMOや事務局型PMOに分類できない独自の「テーマ別PMOモデル」を採用し、プロジェクトの重要課題をテーマ化してPMOを配置。

これにより、2,000名を超える参画者を抱える大規模プロジェクトにおいても、ビジネス・IT・運用が統合的に機能する体制を実現した。

本事例は、グローバルガバナンスを国内プロジェクトに適用しつつ、自社文化に即した形で定着させた高度なPMO構築の実践例として、他の企業や組織にも大きな示唆を与えるものである。

 


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