(写真左)代表取締役副社長 嶋吉耕史 様 /(写真右)一般社団法人日本PMO協会 会長 理事
日本たばこ産業株式会社(以下、同社)は、国内たばこ事業の基幹系システムを刷新するにあたり、グローバルITで活用されているプロジェクトマネジメントのフレームワークを国内大規模プロジェクトで初めて導入した。
SAP ECC6.0のサポート終了と、国内・海外たばこ事業の構造改革を実現するため、国内基幹系システムを廃止し、グローバル基幹系システム(グローバルSAP)へ移行する大規模プロジェクトを企画した。
従来の国内ITプロジェクトでは、明確なフレームワークがない中で、プロジェクトマネジャーの経験、またはITベンダー依存の体制で進められることが多く、プロジェクトマネジメントの標準化が課題となっていた。
今回のプロジェクトでは、社内で経験のない規模のグローバルITプロジェクトを推進するにあたり、従来の手法を刷新し、グローバル標準のプロジェクトマネジメントフレームワークを導入してプロジェクトを実行した。
その結果、数百億円規模、約2,000名が参画するSAPリプレースプロジェクトを、一切の遅延もコスト超過もなく成功させた。あわせて、従来課題とされていた「業務部門の巻き込みの弱さ」「関係社員の意識改革」「ITベンダー依存体質」「事務局PMOの高負荷」などを解決することができた。
導入した「グローバルITプロジェクトマネジメントフレームワーク」は、同社のグループ会社であるJapan Tobacco International(JTI)で活用されている独自のフレームワークである。
JTIはJTグループの海外たばこ事業を担い、130以上の国と地域でビジネスを展開しており、あらゆるプロジェクトの知見がこのフレームワークに凝縮されている。
同社は、このグローバルITフレームワークを国内に導入し、国内の大規模プロジェクトにおいて初めて活用した。
これにより、今までプロジェクトマネジャーごとに異なっていたマネジメント手法や、プロジェクト終了後に知識が組織に残らないという課題を克服し、プロジェクトマネジメントの標準化を実現した。
プロジェクトは、以下の3つの体制で構成された。
今回のプロジェクトでは、ビジネスサイド、開発サイド、運用サイドが一致団結して進めることが不可欠であり、重要なマネジメントテーマごとにPMOを配置。
PMOは、全社へのプロジェクト広報や情報発信機関としても機能し、全社経営メッセージを浸透させ、全社一体のプロジェクト推進体制を形成した。
PMO組織は約10名のリードと実行メンバーで構成され、各テーマのリードを中心に、横断的な調整とガバナンスを担った。
(画像提供)日本たばこ産業株式会社
これらの取り組みにより、PMOは調整・統制のみならず、情報発信や組織的意識変革を推進する中心的役割を果たした。
Espoirプロジェクトの関係者の皆様
PMO活動により、規模が大きく難易度の高いSAPリプレースプロジェクトを、遅延やコスト超過なく成功裏に完遂した。
また、ITプロジェクトにおいてプロジェクトマネジメントのフレームワークの価値が社内で再認識され、PMO機能を継続的に活用するための基盤が構築された。
プロジェクト成功の結果、国内たばこ事業のIT内で初めてPMOチームが正式に組成され、またグローバルPMO組織との連携も開始され、今後の各種プロジェクトにおいてPMOが有効に配置・活用される体制が整備された。
PMOによる組織間連携の重要性が社内で認識され、プロジェクト推進におけるPMOの価値が明確に示された点は、同社にとって大きな成果となった。
戦略的かつ実践的なグローバルPMO体制構築の価値
同社は、自社の大規模プロジェクトに最適なPMO体制を設計し、戦略的に構築した点が高く評価された。
全社型PMOや事務局型PMOに分類できない独自の「テーマ別PMOモデル」を採用し、プロジェクトの重要課題をテーマ化してPMOを配置。
これにより、2,000名を超える参画者を抱える大規模プロジェクトにおいても、ビジネス・IT・運用が統合的に機能する体制を実現した。
本事例は、グローバルガバナンスを国内プロジェクトに適用しつつ、自社文化に即した形で定着させた高度なPMO構築の実践例として、他の企業や組織にも大きな示唆を与えるものである。
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